『キラーストレス 心と体をどう守るか』(NHKスペシャル取材班)を読んだ感想
当ブログでは乳酸菌と腸内細菌のストレス対策効果は慢性炎症・うつ・アトピーを改善するのにオススメである理由について述べていますが、今回は『キラーストレス 心と体をどう守るか』(NHKスペシャル取材班)を読んだ感想について書いてみたいと思います。
「キラーストレス」については以前の記事で取り上げましたが、このキラーストレスとは、医学用語ではなく、NHKスペシャル取材班が名付けた言葉です。
2016年6月にNHKスペシャルシリーズ「キラーストレス」が放送されましたが、この番組の内容は、この記事で取り上げるNHK出版新書の『キラーストレス 心と体をどう守るか』でも知ることが出来ます。
では、「キラーストレス」とは何でしょうか?
おさらいになりますが、「キラーストレス」とは分かりやすく言えば、慢性的に続くことで多くの病気をもたらし、下手をすれば命をもおびやかす危険があるストレスのことだというのです。
ストレスを甘くみてはいけないのだ。ストレスはある条件が重なると、命を奪う病の原因へと形を変えていく。私たち取材班はこのストレスを「キラーストレス」と名づけ、その正体を追うことにした。(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p25)
いまから数万年前。私たちの祖先がもっぱら狩猟で生きていた頃、周囲には、多くの点適が潜んでいた。どう猛な動物にいつ襲われるか分からない。万一、出会ってしまったときはどうするか。命がけで闘うか、もしくは必死で逃げるしかない。このような追いつめられた場面で威力を発揮したのが、「ストレス反応」だ。(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p27)
人間の体は危険に遭遇したとき、心拍数が増え、血圧が上がるようにできている。また、肝臓から糖が放出されて血糖値が上昇すれば、エネルギー源が全身に供給される。闘う姿勢、逃げる態勢の双方が、瞬時に準備されるのである。
このように、ストレス反応とは、私たちの祖先が「命をつなぐために進化させた大切な体の機能」だったのだ。(同 p27~28)
現代社会に生きるわれわれが、天敵に出会って命を脅かされるような事態に直面することはまれだ。ジャングルにでも出かけない限り、猛獣に襲われることはまずない。
一方、現代では、精神的な重圧によって、扁桃体が反応するような事態が引き起こされてしまうのである。これこそ、私たち現代人を悩ませているストレス反応の正体なのだ。(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p37)
NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』 NHK出版新書
「心」のストレス反応が強くなる「我慢するストレス」
「闘争か逃走か」という、現代にまで残っている「ストレス反応」とどう向き合っていくか、ということが、現代社会を生き抜くためのストレス対策として重要になってくるように感じますが、特にNHKスペシャル取材班による『キラーストレス 心と体をどう守るか』を読むと、血圧の上昇など「体」のストレス反応が強くなる「頑張るストレス」よりも、「心」のストレス反応が強くなる「我慢するストレス」が、心の病との関係において問題になってくるのが分かります。
心の病との関連で関心を集めているストレスホルモンが「コルチゾール」だ。
コルチゾールは、副腎から分泌されると、血流にのって体内を循環しながら、エネルギー源の補充などの重要な役割を果たす。役割を終えると脳にたどり着いて、脳に吸収される。これが、正常なストレス反応の流れである。
ところが、主に「我慢するストレス」状態が長い期間にわたって続き、ストレスが積み重なっていくと、コルチゾールがとめどなく分泌され続けるようになってしまう。こうなると、状況が一変する。コルチゾールが脳にあふれて、その一部をむしばんでいくのだ。まさに、ストレス反応が暴走して、ありふれたストレスが「キラーストレス」と化してしまうのである。(NHKスペシャル取材班『キラーストレス 心と体をどう守るか』p48~49)
このような我慢するストレスは、下手をすると「キラーストレス」と化してしまい、うつの症状や様々な病気を引き起こす原因になるというのですが、本書では、番組と同様、ストレスとの向き合い方として、「マインドフルネス瞑想」や「コーピング」、さらにはストレス対策としての生活習慣や食習慣などが紹介されていました。
以前の記事でも書きましたが、「キラーストレス」のような目に見えない「我慢するストレス」が続くことは、多くの病気や慢性炎症、からだの老化、テロメアの短縮などに関係してくると考えられます。
そのため、過剰なストレスに対しては、それぞれがどのように向き合っていくのかが、これからの時代の健康と長寿のためには、非常に大切であるように感じます。